ベネッセが語る、オラクルクラウド活用の軌跡--「攻めの経営」の基盤となるまで

大場みのり (編集部)

2024-04-24 10:00

 日本オラクルは4月18日、プライベートイベント「Oracle CloudWorld Tour Tokyo 2024」を開催した。「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)の基調講演では、米Oracleのグローバル最高情報責任者(CIO) 兼 OCIプラットフォーム・サービス担当エグゼクティブ・バイスプレジデントのジェイ・エバンス氏が登壇したほか、日本オラクル 専務執行役員 クラウド事業統括の竹爪慎治氏が、同社の顧客企業であるベネッセホールディングス 専務執行役員 CDXO(最高DX責任者) 兼 Digital Innovation Partners 本部長の橋本英知氏と対談した。本記事では、この対談を取り上げる。

ベネッセホールディングス 専務執行役員 CDXO 兼 Digital Innovation Partners 本部長の橋本英知氏(左)、日本オラクル 専務執行役員 クラウド事業統括の竹爪慎治氏
ベネッセホールディングス 専務執行役員 CDXO 兼 Digital Innovation Partners 本部長の橋本英知氏(左)、日本オラクル 専務執行役員 クラウド事業統括の竹爪慎治氏

 「進研ゼミ」「こどもちゃれんじ」をはじめ、教育/介護/保育分野で幅広いサービスを展開するベネッセコーポレーション(ベネッセ)は、2025年までの中期経営計画の中核戦略として「DXの推進」を位置付けている。この一環として、DXの推進におけるインフラの役割を見直し、安定性と信頼性を確保しながら柔軟性や拡張性を重視したインフラを構築しているという。

 実はベネッセと日本オラクルの関係は深い。「Generation 1」と呼ばれる、Oracleがクラウドの提供を開始した頃から顧客となっている。同社は2017年、自社のデータセンター内にクラウド環境を構築できる「Oracle Cloud at Customer」(OCC)を導入した。しかし橋本氏は「当時、OCCが大暴れした。基幹システムを対象としていたので、教育や介護などの基幹事業に近いものにトラブルが発生してしまった」と述べた。

 ベネッセは2021年からマーケティング分析基盤、2022年から販売管理や新しい顧客基盤を含む大規模基幹システムをOCI上で稼働している。「当社では1日に約1500バッジを処理する。教材は同時に出荷されるので、出荷関連のバッジ処理数は最大200万弱に上る」と橋本氏は話した。

 同氏は「OCCの経験もあったので、概念実証(PoC)を行いながら1年ぐらいかけて3社ほどのクラウドを比較検討した。やはり業務に合ったクラウドを選ぶことが重要なので、事業や処理の性質を鑑みた上でOCIを選択した。OCIにより、ディザスターリカバリー(DR)や運用コストの削減が実現したほか、移行後はつきものが落ちたかのように安定稼働している」と振り返った。

 ベネッセは、現在オンプレミス環境にある「学校カンパニー」のシステム群のクラウド移行に当たり、OCI上でVMwareベースのクラウド環境を利用できる「Oracle Cloud VMware Solution」(OCVS)を採用した。学校教育の現場や自治体の課題解決に取り組む学校カンパニーは、模擬試験「進研模試」や学力診断テスト「スタディーサポート」などを含む30以上のシステムで構成されている。

 これらのシステムは現在、自社データセンター内の仮想化ソフトウェアスイート「VMware vSphere」上で稼働している。しかしベネッセは、コストの最適化と変化に対応できるインフラへの刷新に向けて自社データセンターの縮退を目指しており、これらのシステムを迅速に移行する必要があったという。移行策を検討する中で、クラウドインフラの構築、プログラムの改修、データベースの変更、データの移行、連携テストなどを伴う従来のクラウド移行では、工数や人員、コストが増加する上、移行期間も長期化することが課題だった。

 そこで、VMware vSphereで稼働するアプリケーションやシステムの変更を最小化し、短期間で大規模な環境のクラウド移行が可能だというOCVSを選定した。橋本氏は「現時点で自社のデータセンターから約7割のデータをクラウドに移行したが、やはり残っているものは手ごわい。これらをどう移行するかと考えた時に、OCVSの採用に至った」と述べた。ベネッセは、移行コストを大幅に低減し、移行後はオンプレミス環境と同じアーキテクチャーや管理手法を維持しながら、柔軟性と拡張性を備えたシステム基盤へと刷新できることも評価しているという。

 OCVSの活用によりベネッセでは、従来のクラウド移行と比較して約85%の移行工期の短縮化と人員の適正化が見込まれるとともに、移行にかかる開発コストも9割以上の削減が期待される。事前検証では、VMware vSphereの仮想マシンをダウンタイムなしでOCIに移行し、オンプレミス環境と同等、またはそれ以上の性能を確認しているという。

 橋本氏は「対象としたシステムは30種類ほど。今までの方法で移行しようとすると3年半ほどかかるが、PoCによる計画では半年強で完了すると見られる。削減されるコストは二桁億に相当するが、コスト以上に大きいのはスピード。ピーク時は60人ほどの従業員が移行に対応する必要があるが、10人ほどで可能だと見込まれる。会社のことを考えると、事業を伸ばす『攻める側』に人員を割きたい。移行のスピードが速くなるので、攻めと守りの両立が可能となった。最終的にうまくいくかはこれからだが、期待している」と語った。

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