DX推進リーダー達が語る、AIソリューションの業務実装(前編)

ChatGPTやCopilotをはじめとする生成AIが台頭する時代に、日本の大企業はDX・人的資本経営にどう向き合うべきなのか。AI領域の第一線ベンダーであるPKSHA Workplaceが3月22日に開催したイベント「DX推進リーダー達が語る、AIソリューションの業務実装」から、パナソニック コネクトの瀧口氏、PKSHA Workplaceの大西氏の講演のエッセンスを紹介する。

独自の使い方を意識した生成AIサービスの構築が求められる

パナソニック コネクト IT・デジタル推進本部 戦略企画総括部 戦略企画部 グローバルIT企画課 マネージャー 瀧口 裕介氏
パナソニック コネクト IT・デジタル推進本部 戦略企画総括部 戦略企画部 グローバルIT企画課 マネージャー 瀧口 裕介氏

 パナソニック コネクト IT・デジタル推進本部 戦略企画総括部 戦略企画部 グローバルIT企画課 マネージャーの瀧口 裕介氏は、ChatGPTやCopilotなど生成AIにはじめて触れた時、インターネットやスマートフォンに並ぶ技術革新だと感じたという。そしてこれを導入することで社員の生産性が大幅に上がるのではないかと考えた。

 瀧口氏はこれまでの経験から、最新技術を社内に導入する際に留意すべき3つのポイントを語ってくれた。

 「まず『自分たちだけで頑張らないこと』です。生成AIを自分たちで一から作る必要はありません。既存のサービスを活用して、自分たちに適した使い方を見出していくことに集中していけばいい。2つ目は『早く使いだして失敗を重ねる』ということ。新しい技術を使おうとするとき、費用対効果などについて細かく説明を求められるかもしれませんが、私はChatGPTの導入を提案したとき『そんなことはわからない』と答えました。導入しないことで大きな損失が出てくる可能性は高かったので、とにかく使ってみましょうと言ったのです。そして3つ目が『従業員に簡単安全に使ってもらえる環境を提供する』ということです。必要なときにいつでも使えることと、どのようにすれば安全に使えるかを意識しておくことが大切です」(瀧口氏)

 こうした原則を踏まえながら、瀧口氏を中心としたチームは、ChatGPTをベースにした「ConnectAI」という社内サービスを2023年2月、国内社員1万3000人に社内展開した。構築プロジェクトは2022年10月からスタートしたので約4カ月でリリースできたことになる。「ConnectAI」はリリース当初は「GPT3.5」のみを利用していたが、いまでは「GPT-4 Turbo」まで利用できる。現在、パナソニックが「ConnectAI」をベースに、グループ全体に最適化した生成AIサービス「PX-AI」を国内9万人に展開し、さらに海外にも展開中だ。

 瀧口氏は「ConnectAI」が個別の資料作りなど非定型の仕事にも使えるはずであり、そうすることで業務効率の向上がさらに望めると話す。

 「RPA(ロボティックプロセスオートメーション)などによる自動化はどうしても定型業務が対象となります。しかし生成AIは資料作りなど非定型の仕事にも使えます。情報収集・整理、ドラフト作成といった資料作りにおける作業プロセスのほとんどを生成AIが行い、最後のチェックと仕上げだけを人間が行うようになるでしょう」(瀧口氏)

 こうした近未来の働き方を踏まえ、瀧口氏は社内利用に最適化された生成AIが必要だと考えた。

 ChatGPTそのものを社内に提供するだけではなく「ConnectAI」を構築した理由として、①自社の公開情報についても回答してくれるようにする、②シャドーAIの防止が挙げられる。

 ①については、資料作成などをする際、どうしてもWebで公開している自社情報を利用できる方が効率的だ。しかしChatGPTをパブリック利用するだけでは、パナソニック コネクト自体の情報を踏まえた回答はしてくれない。そこで「ConnectAI」が公開されている自社情報について回答できるようにして、さらに社外秘情報についても回答できるようにした。

 ②については、何らかの形で社員が生成AIを利用することは目に見えていたので、誤ったAIからの回答を拡散させたり、管理者には見えない状態でサービス利用を中断してしまうことを防ぐために、より使いやすいAIサービスを提供することにした。

 さらに「ConnectAI」では、生成AIサービスの利用の仕方が分からない社員のために、利用に関する「15のサンプル」を作成している。これらは「会議進行のアドバイスを聞く」「専門的なアドバイスを聞く」「ビジネスアイディアを聞く」「リスクに対するアドバイスを聞く」といったもので構成されている。

 また生成AIは日本語よりも英語を使った方が比較的良い回答をするため、英語の翻訳機能も用意しているという。そして社内ユーザーがAIの回答を5段階評価する機能も備え、そのほか新しい使い方の提案なども募集し、機能改善に生かしている。

 「実際の使われ方として、当社が製造業だということもあり、設計や製造工程、材料などについての質問も多数来ています。例えば『各部品選定における注意点』などの回答を得て、設計、製造業務の中で活用されているユースケースもあります。」(瀧口氏)

 瀧口氏によると、このほか、経理、マーケティング、法務、経営企画などの部署で独自の利用方法が編み出され、当初の予想以上の展開になっている。

 また生成AIサービスは、質問側とAIによる一対一のやり取りだけと解釈されがちだが、別のプログラムを連携させることで、大量のデータを一括処理できる。パナソニック コネクトでは、例えば1500件に及ぶ社内アンケートの分析を行う際も「ConnectAI」を活用している。自由記述部分の分析では、人手のみで行うと9時間程度かかったが、「ConnectAI」では6分で完了した。

 「ConnectAI」は現在1日に5000回以上利用されており、社内の評価もGPT-4が使えるようになってからは高まっている。利用ケースとして多いのは「質問」「プログラミング」「文章生成」「翻訳」などが挙げられている。

 そして今後取り組む改善策として、瀧口氏は、「個別の企業情報を利用できるようにする」「回答の引用元を提示できるようにする」「検索エンジンと連携し最新情報も利用できるようにする」という3つを挙げた。

「これらの改善が進めば、品質管理やカスタマーサポートの分野で、さらに大きな業務効率化が進むものと思います。こうした当社の現場での生産性向上が、お客様にとってのメリットにもつながっていくはずです」(瀧口氏)

人とコラボする生成AIの仕組みこそが求められる

PKSHA Workplace 執行役員 Workplaceビジネス本部 本部長 大西 正人氏
PKSHA Workplace 執行役員 Workplaceビジネス本部 本部長 大西 正人氏

 PKSHA Workplace 執行役員 Workplaceビジネス本部 本部長の大西 正人氏は、具体的な生成AIの活用ケースの中で、極めて重要になるのが「ナレッジの利活用」だと話す。

 「企業社会の中で人員不足と熟練者の引退が大きな問題になっています。ナレッジの利活用の基盤をいかに効率的かつ迅速に構築するかは、企業の死活問題となるはずです」(大西氏)

 PKSHA Workplaceでは、「PKSHA AI ヘルプデスク」というクラウド型のナレッジマネジメントプラットフォームを提供している。社内の各種ドキュメントをAIが読み込み、問合せへの回答を自動生成する。またMicrosoft Teams内で使えるようにし、さらに利便性を向上させた。同プラットフォームは、ChatGPTと連携している。社内規定などのドキュメントを学習したAIがドキュメントから回答を自動生成し、また問合せログをAIが解析しFAQを自動生成するといった機能を搭載している。

 また「PKSHA AI ヘルプデスク」では、AIが生成した回答でも解決できない場合は、企業内の担当者が直接対応し、FAQを作る機能も搭載している。このFAQをAIが自動的に学習し、同じ質問が来た場合は、自動的に回答できるようになる。

 大西氏はChatGPTについて「使える、使えない」という判断を早急に決めてしまうのはもったいないと話す。

 「ナレッジの利活用を効率的に行うには生成AIが不可欠です。しかしChatGPTをそのまま導入すればすぐにFAQを作ってくれるわけではありません。またそうしたFAQのみで疑問が解決するわけでもない。そこに人を介在させて、丁寧な説明による疑問解決が行われる必要があります。問題は人員が少ないなかで、いかに人による丁寧な対応を可能にするかです。だからこそ『PKSHA AI ヘルプデスク』にコミュニケーションツールであるMicrosoft Teamsを連携させたのです」(大西氏)

 生成AIが一般的で解決しやすい問題に対応することで、担当者の時間的な余裕が生まれ、人にしかできない対応が十分に実行できるようになる。すべてをAI任せにして仕組みをつくるのではなく、生成AIと人がコラボレーションしたわかりやすい仕組みを作ることが今後重要になるはずだ。

提供:株式会社PKSHA Workplace
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