SZ MEMBERSHIP

Humane「Ai Pin」は機能がまだ少なく、現時点でスマートフォンの代わりにはならない:製品レビュー

Humaneのウェアラブルデバイス「Ai Pin」は昨年の発表当初大きな話題を呼んだ。ただ、このほど実機を試したところ、できることが限られており、AIの回答の精度もまちまちだった。現時点では、スマートフォンの代わりとして使えるほどではない。
Humane「Ai Pin」レビュー:機能がまだ少なく、現時点でスマートフォンの代わりにはならない
PHOTOGRAPH: JULIAN CHOKKATTU

「この前メッセージしたとき、聞きたかったのはこれのことだよ!」

Humaneのウェアラブルデバイス「Ai Pin」を着用しているわたしの姿を見て、母はそう言った。人工知能(AI)を搭載したこの新しいウェアラブルデバイスは、指一本でOpenAIの「ChatGPT 4.0」やグーグルの「Gemini」などのAI モデルをどこからでも簡単に利用できるようにする。母は毎日視聴しているインドのニュース番組でこの製品のことを知った。Humaneの最初の製品がいかに話題になっているかがわかるだろう。

Ai Pinが実際にどんなものなのかを母が知りたがったので、実演してみせた。キッチンで料理をする彼女の隣でAi Pinをタップし、「目の前に何があるかを教えて」と言う。するとAi Pinはわたしの前にあるものをカメラで捉え、それがレタスであることを教えてくれた(正解だ!)。

母がわたしにキュウリの皮を剥いてほしいと言うので、タップでデバイスを起動させ「キュウリの皮を剥く必要はありますか?」と質問した。ワックスが塗られている場合や料理に使う場合を除いて、皮を剥く必要はないとAi Pinは答えた。母はフィッシュ・モイリー(魚を使ったカレー)をつくっていると言うので、わたしはAi Pinにそれがどんな料理かと質問した。すると驚いたことにAi Pinは質問を理解し、こう回答したのだ。

AIの回答の精度はまちまち

説明はもう少し続いたが、Humaneのウェアラブルが提供する情報の正確性を次第に疑うようになった。父がノンアルコール飲料「Malta GOYA」の瓶をわたしに手渡したとき、母は異性化糖(高フルクトース・コーンシロップ)は摂らないようにと言った。カリフォルニア州では禁止されているからとのことだ。これについてAi Pinに質問すると、その説明は正しいと言った。しかし、調べてみると、実際のところは禁止されていなかった。確かに、同州は23年に4種類の食品添加物を禁止しているが、それに異性化糖は含まれていなかったのだ。

TikTok content

This content can also be viewed on the site it originates from.

また、両親の家のテレビ画面に映るChromecastのスクリーンセーバーに、どこかの寺院の画像が映っていた。父がそれがどこの写真かを知りたがったので、わたしはAi Pinを画面に向けて、「写真を見て、どこを写したものかを教えて」と言った。Ai Pin はカンボジアのアンコールワットだと答えた。その回答を疑う明確な理由はなかったものの、Ai Pinには通常のディスプレイがないので真偽を確かめられない。そこでわたしはスマートフォンの「Google レンズ」を起動し、カメラを画面に向けた。すると、その寺院はタイのプラヤーナコーン洞窟にあるものだと教えてくれた。「Google 検索」の画像は、スクリーンセーバーのものと完全に一致していた。

Ai PinのAi MicとVision機能(後者はまだベータ版)の回答を完全に信頼できないことは、このウェアラブルコンピューターの問題のひとつに過ぎない。それに残念ながら、搭載機能が少なすぎて、これ以外にできることがあまりないのだ。HumaneのAi Pinは、今後予定されているソフトウェアアップデートが実施された1年後には興味深いガジェットになっているかもしれない。しかし、現時点では話のネタにできるだけの製品である。

このウェアラブルは主にタップして使う。

PHOTOGRAPH: JULIAN CHOKKATTU

服に留めて使うAi Pin

HumaneのAi Pinを購入したらまず、Humaneのアカウントとパスコードを設定する必要がある。こうすることで、デバイスを受け取ったらすぐに使い始められるのだ。デバイスにパスコードを入力するだけでいい。簡単だ。

Ai Pinの使い方については昨年記事になっているが、ここでも簡単に説明しよう。Ai Pinは基本的にふたつのパーツで構成されている。ひとつは、コンピューターやマイク、スピーカー、カメラ、タッチパッド、プロジェクターといった主要な部品を内蔵した、外向きに取り付ける本体部分だ。ふたつ目はBattery Boosterで、Ai Pinの背面に磁石でくっつく。このBattery Boosterをシャツやジャケットの内側に沿わせ、本体を服の上から磁石でくっつけて留めるというわけだ。胸の辺りに留めることが想定されている。

Battery Boosterの磁石はどんな衣類にも対応しているわけではない。厚手のジャケットを着る場合は、端末を安全に取り付けるためにクリップ付きのマグネット「Clip」を購入する必要がある。(これにバッテリーは搭載されていない)。薄手の服を着る場合は、「Latch」を使用するといい。これにもバッテリーは搭載されていないが、より軽量で、Ai Pinが生地を引っ張ることを防ぐ。

また、Ai Pinの外周に色を添える「Shield」も購入できる。とはいえ、Ai Pinを落としたときに、この薄くて柔らかいプラスチックがデバイスをしっかり守ってくれるようには思えない。本体とアクセサリーはアップル並に洗練されている。Humaneの創業者がアップル出身だからだろう。

PHOTOGRAPH: JULIAN CHOKKATTU

Ai Pinのバッテリーは約4時間持続するが、Battery Boosterを使用するとそれが9時間に延びる。Ai PinにはふたつのBattery Boosterと充電パッド、USB Type-Cケーブル、電源アダプター、充電ケースが同梱されている。

充電アダプターのUSB Type-Cのポートは横向きになっているので、コンセントからあまり突き出さない。ケーブルは編み込まれており、手触りがよい。ケーブルを充電パッドに接続して、この上にBattery Booster(またはAi Pinに取り付けたBattery Booster)を置くだけでワイヤレスに充電できる。銀色の充電ケースは大きな卵のような見た目と触り心地で、グーグルのワイヤレスイヤフォン「Pixel Buds Pro」のケースに似ている。外出時のバッテリーの充電に便利だ。

充電ケース

PHOTOGRAPH: JULIAN CHOKKATTU

普段は、充電ケースに予備のBattery Boosterを入れておき、Ai Pinと一緒に使っているBattery Boosterの充電が切れたら(音声で知らせてくれる)交換して使っている。これでたいていの日は1日問題なく過ごせる。すべての充電が切れたとしても、Ai PinとBattery Boosterを充電ケースに入れ、USB Type-Cケーブルで電源につないでおけばいい。

Ai Pinは T-Mobile の通信ネットワークを利用した LTE通信に対応している。従って、米国でAi Pinを使うには月額24ドルかかる(最初の3カ月間は無料)。データ通信料を支払わないと、Ai Pinは「操作不能」になる。この月額料金には、米国内での無制限の通話とテキストメッセージの送受信および国外での通信が含まれている。クラウドデータストレージとAIサービスの利用料も含まれている。

タッチパッドを操作する

では実際、Humane Ai Pinで何ができるのか。Ai Pinは特定のワードで起動させる仕組みではないので、何かを指示するときは、タッチパッドをタップして長押しをしながら話しかける。グーグル検索で調べるようなことなら何でも対応できる。Ai Pinは基本的に質問への回答を音声で読み上げるが、デバイスの前に手のひらをかざすと「レーザーインクディスプレイ」が起動し、音声での回答はしなくなる。そう!プロジェクターで手のひらに結果を映し出すのだ。これについては後ほど詳しく説明するが、奇妙な感覚である。

タッチパッドを2 本の指でタップして長押しすると翻訳モードが起動する。この機能で自分が話している言葉を別の言語に翻訳したり、ほかの人が話している言葉を英語に翻訳したりすることができる。スペイン語を話す人と、英語への翻訳を試す機会があったのだが、これはかなりうまく機能していた。

Ai Pinはカメラにもなる。2本指のダブルタップで写真を撮影、2本指のダブルタップと長押しで15 秒間の動画を撮影できる。撮影中であることを示すためにLEDが点灯し、写真を撮るときもわかりやすくシャッター音が鳴る。また、デバイスで音楽を再生することも可能だが、この機能を使うにはTidalの有料プランに登録する必要がある(ほかの音楽配信サービスにも対応する見通しだ)。Bluetoothに対応しているので、ワイヤレスイヤフォンとペアリングして音楽を聴くことができる。

Ai Pinでの操作や記録はすべて、Humane Centerと呼ばれるウェブポータルから確認できる。Ai PinをWi-Fiに接続し、なおかつ充電しているときに限り、写真や動画を高解像度で確認することが可能だ。Humane Centerでは聴いた音楽の一覧を確認したり、Ai PinをTidalのようなサードパーティーのサービスに接続したりすることもできる。また、Ai Pinに質問したことの履歴や、覚えておいてほしいと頼んだ内容も確認できる。

プライバシーの点で懸念を覚える人もいるかもしれないが、新しいデバイスでHumane Centerにログインするときは二要素認証が必要な点は知っておいてほしい。Humaneの共同創業者であるベサニー・ボンジョルノは、同社における収集したデータの扱いについてこのように説明している。「通常の状況下では、Humaneにかかわる人がこれらのデータを閲覧することはありません。すべての顧客データは暗号化によって守られ、アクセスに関しても厳格かつ保護的な制御措置を施しています」と言う。「例外としては、召喚状のような法的な要請に従う場合などです」

セキュリティ上の理由から、Ai Pinで送信したテキストメッセージを確認することはできない。だが、これはAi Pinに対する不満のひとつだ。ここからは、このデバイスに対する不満や問題点を説明する。

手のひらに投影されたAi Pinのユーザーインターフェース。操作が難しく、全体的にわずらわしく感じる。

PHOTOGRAPH: JULIAN CHOKKATTU

手のひらに投影するUIが使いづらい

はっきり言おう。Humaneのレーザープロジェクターを使ったディスプレイは、ガジェットの実用的な操作方法として普及することは決してないはずだ。この機能は非常に敏感で操作に時間がかかるのだ。手のひらにユーザーインターフェース(UI)が投影されたら、使いたいアイコンにたどり着くまで、手を傾ける動きでアイコンをスクロールする必要がある。しかし、ここで手を傾けすぎると、目的のアイコンを通り過ぎて次のアイコンが選択される。非常にうっとうしい。投影されたインターフェースで過去のテキストメッセージを探す作業にも手間がかかった。もちろん、Ai Pinにメッセージを読み上げてもらうことはできるが、常にそれができる状況にあるわけではない。

テキストメッセージを送る際の使い勝手には、よい面と悪い面がある。個人の電話番号をHumane Ai Pinの電話番号にひも付ける方法がないのは難点だ(ただし、今後対応するかもしれない)。これはつまり、グーグルやアップル、マイクロソフトから連絡先をインポートできるものの、通話やテキストメッセージでやりとりする相手にまず自己紹介をし、なぜいつもと違う番号を使っているかを説明しなければならないことを意味する。

いまのところAi Pinに新しい連絡先を追加することはできない。また、テキストメッセージなどが届いたときに通知を受け取りたい場合は、相手の連絡先を「信頼できる連絡先」として指定しておく必要がある。そうでなければ、未読メッセージがあるかをプロジェクターで確認するか、「通知の最新状況を教えて」と言って、Ai Pinに見逃した通知を読み上げさせて確認しなければならないのだ。

手にディスプレイを投影している様子。

PHOTOGRAPH: JULIAN CHOKKATTU

Ai Pinにテキストメッセージを送るよう指示したとき、奇妙な問題が生じた。相手の名前を言ってから「メッセージを送って」と指示したのなら、Ai Pinは次に送りたいメッセージの内容を聞いてくると普通は考えるだろう。ところが、HumaneのAi Pinは「メッセージを送って」というメッセージを友達に送るかと確認してきたのである。誰かに「テキスト」を送るように頼んだときも同じことが起きた。つまり指示は(単語だけではなく)もう少し会話調の文章にする必要があるようだ。「バチェラーパーティーに参加すると、クリスに伝えて」と言ったときはうまく機能した。

また、Ai Pinがメッセージで伝える内容をモデレートすることを知ったときは、正直言って少しショックだった。「バカだね」と友人に冗談で伝えようとしたところ、Ai Pinは「攻撃的な言葉遣い」としてメッセージを送信しなかったのである。正確にメッセージを書き起こしたい場合は「書き起こして」と指示する必要があることがわかった。メッセージを確認するときの反応も遅い。プロジェクターを使用する場合、メッセージが読み込まれるまでに数秒かかることがある。

Ai Pinのプロジェクターで手のひらに投影するディスプレイは使いづらい。

PHOTOGRAPH: JULIAN CHOKKATTU

プロジェクターといえば、日中の屋外では、手のひらに投影された画面はほぼ見えなかった。見える状態を維持できるほど、プロジェクターの光が強くないのだ。これは、Ai Pinのロックを解除するパスコードを入力していない場合に問題となる。パスコードの入力に必要な数字がほとんど見えないからだ。Humaneは音声でパスコードを入力する方法も開発中だと言っているが、日陰にいないと唯一の「ディスプレイ」が使い物にならないという点には困惑するばかりである。

プロジェクターを起動するにはタッチパッドをタップし、手のひらをデバイスの前にかざす(これはいつも機能するわけではない。この2時間ほど、プロジェクターが表示されない状態が続いている)。

また、手のひらを下ろした後も、ほんの少しの間緑色のレーザーが照射され続ける。これも問題だった。友人の誕生日パーティーにAi Pinを着用していったのだが、プロジェクターを使用するたびに、テーブルの向かいに座っていた人が目を細めていた。顔に緑色の光が当たっていたからだった。それが何回か続くとその人は「やめてよ」と言いたげな目でわたしを見た。おっと、失礼。

それから排熱の問題もある。あるとき、Ai Pinに3回質問をした後、本体が熱くなりすぎたので冷ます必要があるとAi Pinから警告があった。確かに、タッチパッドとデバイスの側面が不快なほど熱くなっていた。わたしはこのとき以外、この問題に遭遇していないが、知り合いのレビュアーにも尋ねた。すると、『Engadget』のチャーリン・ロウ、『ワシントン・ポスト』のクリス・ヴェラズコ、そしてユーチューバーののマイケル・フィッシャーも同じ問題に遭遇し、これよりもずっとひどい状況だったようだ(ロウがテストしていたAi Pinに触ったら、本体が驚くほど熱くなっていた)。「次のソフトウェアの更新で全体的な排熱の性能を向上できるよう取り組んでいる」とHumaneは説明している。

体に触れるバッテリー側では熱をあまり感じない。とはいえ、薄手のパーカーやTシャツを着ている場合は、無視できないほどのほのかな暖かさを感じる。その部分だけ体が少し暖かくなった感覚があるのだ。

Ai Pinはジャケットに装着した方がいいが、そうするとセキュリティ面での不安が生じる。デバイスをBattery Boosterから離す度に(端末を取り外したり、調整したりするとき)、Ai Pinはデフォルトでパスコードの入力を要求するようになっている。しかし、例えば、Ai Pinをジャケットから取り外すのを忘れてクロークに預けた場合、誰かがこっそりあなたのジャケットを着て、テキストメッセージをすべて盗み見られてしまうかもしれないのだ。十分安心できるかはわからないが、デバイスの設定で15分、30分、60分おきにパスコードを要求するように変えることはできる。

Ai Pinはワイヤレスで充電され、専用の充電パッドが同梱されている。

PHOTOGRAPH: JULIAN CHOKKATTU

長所はハンズフリー通話と撮影のしやすさ

よい点もいくつかある! Ai Pinで電話ができるのだ。音声の質はあまりよくないと相手は言っていたが、スマートフォンを顔に近づけずに通話できる点は素晴らしい(ワイヤレスイヤフォンでもできるけれど)。

また、写真や動画の撮影に使える点も気に入った。撮影のしやすさが気に入ったという意味だ。昼間に撮影した画像や動画の画質は悪くなかったが、少しでも暗いと画質はすぐに落ちる。暗めのレストランで開催された友人の誕生日パーティーで撮った写真は使いものにならなかった。

これをボディカメラだと思う人がいたことについても言及しなければならない。これはちょっと気まずい体験だった。バーテンダーになぜカメラを着けているのか尋ねられ、このデバイスの主な用途はカメラではないことを説明しなければならなかったのだ。ほかにも同じことを何回か訊かれたが、皆丁寧な訊き方だった。とはいえ、いずれ誰かが否定的な態度で指摘してくるのではないかと少し神経質になっている(これはかつてGoogle Glassをかけたイヤなヤツらがいたからだろう!)。

使える機能があまりに少ない

突き詰めるとHumaneのAi Pinの問題は、できることが少ない点にある。自分の位置を知らせて、UberやLyftを呼ぶことができない。近くのカフェを検索することはできるが、そこまでの案内はしてくれない。仕事のカレンダーを確認して、その日の予定を訊くことはできない。何かを覚えておくよう指示することはできるが、そのことを思い出させてはくれない(翌日に街に足を運ぶ予定があると伝えたが、翌朝に今日の予定を尋ねたところ、Ai Pinは代わりに1週間前に受け取ったテキストメッセージの内容を読み上げていた)。タイマーを設定できないし、Ai Pinで撮影した写真を共有することもできない。発売時にこれほど機能がないのもおかしい話だ。もちろん、Humaneはこれらの機能を今後提供する見通しだと説明している。

しばらくすると、外出先でAi Pinをほとんど使用していないことに気づいた。機能を試すためだけに3つか4つ質問をする程度だ。そしてその結果に失望することも多かった。地元の地下鉄の駅で次のJ路線の電車がいつ到着するかと質問したところ、その情報は利用できないと言われた(スマートフォンの「Google マップ」に情報はあるのに!)。

Ai Pinを着用する頻度は次第に減っていった。同社の共同創業者らが、常に顔の前に画面をかかげずに現実世界に集中できるようこの製品をつくったことは知っているが、その目標を達成するためには、デバイスの機能はいつでも100%信頼できるものでなければならない。

Ai Pinを使うと、初めて家中にスマートスピーカーやスマートディスプレイを置いたときの高揚感を思い出す。どの部屋にいても「Alexa」や「Google アシスタント」を利用できることにわくわくしていた。とはいえ、少なくともこれらの音声アシスタントは自宅のスマートホームデバイスを制御できた。 グーグルのスマートディスプレイ「Google Nest Hub」と何回かAi Pinの回答を比べたところ、グーグルの回答はAi Pinの回答と一致していることがわかった。また、スマートフォン経由でGeminiの回答と比べたときも同様の結果だったが、検索結果はちゃんとした画面で確認できた方がいいと感じた。

待機中のAi Pin

PHOTOGRAPH: JULIAN CHOKKATTU

HumaneのAi Pinはうまくいく可能性がある。ただし、AIアシスタントを素早く利用できる点はよいが、現時点ではスマートフォンの代わりに使いたくなるような魅力はない。

Humaneはこれがまだ初期バージョンであり、先ほど言及した多くの機能を今後実装すると主張している。実際に実装されたらもう一度試してみたい。しかし、わたしの仕事はいま手元にあるデバイスをレビューすることだ。いずれ搭載されるかもしれない機能や、されないかもしれない機能を想定した製品はレビューできない。電気自動車(EV)メーカー、フィスカーのことを想像してほしい。ソフトウェアを改良したバージョン2.0で同社のEVの問題はいくつか解消されるかもしれないが、1年後には会社自体存在していないかもしれないのだ。

Humaneがそうならないことを期待している。この技術がわたしたちをどこに連れていってくれるのかが楽しみだ。しかし、この第1世代の製品を進化させ、いつかスマートフォンに取って代わるものにしようとするなら、もっと多くの連携機能(「アプリ」とはあえて言わない)を搭載する必要がある。

◎「WIRED」な点

テキストと音声を扱うAIモデルをすぐに使える。上品なアクセサリーに仕上がっている。ハンズフリー通話は便利。設定はスムーズ。リアルタイムの翻訳機能の性能はよい。

△「TIRED」な点

発売時点で利用できる機能が少ない。排熱の問題で本体が熱くなる。回答の精度はまちまち。プロジェクターの操作が難しく、日中の屋外ではほぼ見えない。低照度での写真や動画の画質が低い。Ai Pinの電話番号とスマートフォンの電話番号をひも付けられない。誰かに乗っ取られたり盗まれたりするリスクがある。

(Originally published on wired.com, translated by Nozomi Okuma)

※『WIRED』によるウェアラブル端末の関連記事はこちら


Related Articles
Humane Ai Pin camera attached to a hoodie sweatshirt
Humaneがウェアラブルデバイス「Ai Pin」をこのほど公開した。手のジェスチャーや音声入力で操作でき、写真撮影や音楽の再生、AIアシスタントとのやりとりができる。とはいえ、これがスマートフォンに変わる未来のコンピュータとして定着するかどうかはまだわからない。

雑誌『WIRED』日本版 VOL.52
「FASHION FUTURE AH!」は好評発売中!

ファッションとはつまり、服のことである。布が何からつくられるのかを知ることであり、拾ったペットボトルを糸にできる現実と、古着を繊維にする困難さについて考えることでもある。次の世代がいかに育まれるべきか、彼ら/彼女らに投げかけるべき言葉を真剣に語り合うことであり、クラフツマンシップを受け継ぐこと、モードと楽観性について洞察すること、そしてとびきりのクリエイティビティのもち主の言葉に耳を傾けることである。あるいは当然、テクノロジーが拡張する可能性を想像することでもあり、自らミシンを踏むことでもある──。およそ10年ぶりとなる『WIRED』のファッション特集。詳細はこちら