4月スタートの「相続登記の申請義務化」、罰則は?--活用法を考え空き家を資産へ

小橋龍治 (GAテクノロジーズ)2024年04月15日 09時00分

 国や自治体で空き家や所有者不明の土地への対策が積極的に行われるようになり、遠い存在だった空き家問題が実は身近なところに迫っています。4月から「相続登記の申請義務化」がスタートするなど、土地や相続にまつわる法制度の変更が行われています。

 私は、お客様が所有する土地の活用に関するコンサルタントとして、20年以上従事してきました。現在は、GAテクノロジーズが提供しているサービス「RENOSY 土地活用の相談窓口」で土地の所有・相続に悩む方々に向け、最適なプランをご提案しています。GAテクノロジーズは、不動産をはじめとするさまざまな産業のビジネス変革に取り組むテック企業として、ネット不動産マーケットプレイスRENOSYを運営しており、土地や不動産を「資産化」するためのサポートをしています。

 この記事では、土地や相続にまつわる法制度の変更を踏まえて「日本の空き家問題はどうなるのか」を解説します。

  1. 4月から「相続登記の申請義務化」がスタート
  2. 空き家を放置し続けると思わぬ費用の発生がある可能性も
  3. まずは所有する土地の情報整理を
  4. 土地活用の方法と事例
  5. 正しい知識を身につけ、あらゆる視点から準備を

4月から「相続登記の申請義務化」がスタート

 空き家や所有者不明の土地の発生を防ぐことを目的として、4月1日から「相続登記の申請義務化」がスタートしました。この制度がスタートしたことにより、不動産を相続や遺産分割で取得した人は3年以内に相続登記の申請をすることが義務となりました。正当な理由なく申請をしなかった場合は、10万円以下の過料が科される可能性が出てきます。申請義務化がスタートする前に相続をしたとしても、土地の登記をしていない場合は対象となります。

空き家を放置し続けると思わぬ費用の発生がある可能性も

 相続登記の申請義務化がスタートする前から、国や自治体の土地や相続に関する動きは活発になっています。2023年には大きな動きが2つありました。

 1つ目は「空家等対策の推進に関する特別措置法」の一部が、2023年12月に改正されました。この法律は、適切な管理がなされていない空き家などの所有者に対して行政指導の実施や、空き家およびその跡地の活用を目的としています。それが2023年には、所有者の責務強化、空き家などの活用促進、所有者に代わり行政が適正管理に向けた取り組みを行う代執行の円滑化などといった内容が強化されました。

 2つ目は「相続土地国庫帰属制度」が2023年4月にスタートしました。相続した土地を手放したい人は一定の手続きを行えば、国庫に帰属させることができるようになりました。遠くに住む実家の土地を相続したけれど、なかなか行くことができず管理が難しいため、土地を手放したいといったニーズに応えるための制度となっています。

 このような動きの背景には、空き家や所有者不明の土地が増加していることにあります。総務省の調査では、空き家の総数は848万9000戸までのぼり、総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は13.6%と過去最高(平成30年住宅・土地統計調査(総務省)p.2)になっています。

 空き家を放置し続けると、倒壊や悪臭など、周囲に悪影響が及びます。そのような危険な状態にある空き家の所有者もしくは相続人に対して、自治体は措置を行っています。措置は段階的に実施され、助言または指導に始まり、それでも改善されない場合は勧告・命令・戒告、最終的には行政代執行と進んでいきます。

 この場合の行政代執行は、所有者の代わりに自治体が空き家の解体を行います。その費用は所有者もしくは相続人に請求され、30坪の家屋の場合、おおよそ100〜150万円程度の費用が発生してしまいます。

 たとえば、もし今後、個人が住む予定のない実家の土地を相続し、日々の忙しさから対応を後回しにしてしまうと、相続登記申請をしなかったことによる過料や行政代執行による解体費用といった思わぬ支払いをしなければならなくなるマイナスの出来事も考えられます。

まずは所有する土地の情報整理を

 それではマイナスの出来事が起きないようにするために、個人は何をしたらいいのでしょうか。

 まずは、土地を所有する場合、土地の実態把握と情報整理を行います。その土地の所在地、軒数、その土地の状態(家屋なのか、更地なのか、商業地なのかなど)、相続対象は誰になるのか、といった情報を整理し、相続対象者になる方は、この情報を家族に確認します。

 長く居住した場所であれば思い入れを感じ、どのようにしたらいいのか迷ってしまう方もいるでしょう。そのような時は、専門家や自治体に問い合わせ、第三者の視点を入れてみようと考えるかもしれません。法制度の動きにより、土地相続に関する相談を受け付けている自治体もあります。

土地活用の方法と事例

 それでは土地活用をする場合、どんな方法があるのでしょうか。売却、建築・建替え、リノベーションなどさまざまあり、何を目的とするかによって専門とする相談先が異なってきます。例えば、売却益を得たい場合は不動産会社、節税をしたい場合は税理士がベストな相談先となるでしょう。

 RENOSY 土地活用の相談窓口に寄せられた実際の相談事例を紹介します。

 相談者は首都圏在住の40代男性です。相談内容は、地方に高齢の家族が住む店舗兼住居のアパートがありますが、老朽化しているため空室もありました。相談者が近い将来そのアパートに住む予定はないため、今後どのようにすべきか、すでに他社に問い合わせをしているところでした。しかし、提案内容が高額な頭金を支払うプランや家族のみが住むためのプランであり、もっと収益化する方法を求め、相談をいただきました。

工事前の建物 提供:RENOSY 土地活用の相談窓口 工事前の建物 提供:RENOSY 土地活用の相談窓口
※クリックすると拡大画像が見られます

 私からは、3階建ての店舗兼住居に建替えを行う、当初のプランよりも費用をおさえた方法を提案しました。その後は、地元の銀行へのローン交渉やすでに問い合わせた企業へのお断りの代行をしました。結果的に土地のバリューアップができ、お客様に納得してもらうことができました。

 2つ目の事例は、同じく首都圏在住の40代男性からの相談です。相談者の両親が購入した土地があり、空き家となっている状態でした。すでに売却以外の方法で他社のハウスメーカーに問い合わせをしていました。ハウスメーカーからの提案プランは、ワンルームの木造アパートへ建替え、賃貸に出す形でした。しかし利回りや設定予定の家賃に納得できず、保留となっている状況で当社に相談がありました。

 当社では、まずその土地の市場調査を行いました。調査結果からは、その地域ではワンルームではなく、ファミリー向けの物件に需要があることがわかりました。このように建替え方法を提案していくうちに、相談者の両親に「将来自分が住むかもしれない」といった気持ちの変化が出てきました。アパート経営をするのか、家族が住むのか、ベストなプランを第三者の視点から提案しつづけました。最終的には、賃貸用の戸建てに建替えをすることになりました。調査のおかげでファミリーの需要があることがわかったため、安定した家賃収入を見込める、家族全員が納得するプランに落ち着きました。

 このようにさまざまなプランを比較検討することにより、新たな選択肢が生まれ、お客様にとっては収益アップの可能性も出てきます。

 最後に、いわゆる「資産の組み換え」をした事例を紹介します。首都圏在住の30代男性からの相談です。当社のサービスRENOSYで投資用不動産を購入されている方で、さらなる投資用不動産の買い増しを検討されていました。そこで共同名義となっている地方の土地を有効活用できないか、といった相談がありました。元々は相談者の祖父が持つ土地で、鬼籍に入られたため家族との共同名義となっていました。当社からは、土地売却と新たなアパート建築を提案し、アパートを建設した場合の収支シミュレーションを行いました。かかる総事業費のうち、手出しをする資金を引いた手残りから利回りを計算しました。地方の場合は、家賃が低いこともあり、首都圏の物件と同じくらいの低い利回りになってしまうことがわかりました。そのため、お客様は土地を売却し、売却益を頭金にして1棟アパートなどの新たな不動産の購入を検討しています。

 もし土地をそのまま放置をしていたら、売却益を得ることができませんでした。このように資産を見直すことによって、新たな選択肢を広げることができました。

正しい知識を身につけ、あらゆる視点から準備を

 この4月に始まった「相続登記の申請義務化」をはじめとする相続や土地に関する法制度の施行により、日本の空き家問題が一人ひとりの身近な問題となりました。ときには専門家の意見を取り入れながら、正しい知識を身につけ、法律や不動産などあらゆる視点から準備をすることが大切です。

 また、これをチャンスと捉え、土地の活用をする方が増えていけば、これまでに使われていなかった土地が魅力的な場所となり、活性化し、資産となる未来もあるかもしれません。

小橋 龍治氏

小橋 龍治氏

GAテクノロジーズ
RENOSY 土地活用の相談窓口 責任者

東建コーポレーションに新卒入社し建築営業に従事。事業所長・エリア統轄責任者等を経て、土地活用部門開設に伴い、2022年にGAテクノロジーズ入社。20年以上コンサルタントとして、数多くの土地活用に携わる。RENOSY 土地活用の相談窓口では、土地や相続に悩む方に向けて、中立的な立場でお客様にとって最適なプランを提案。日々、建設会社やリノベーション会社、銀行等との交渉を行う。ときには商談や契約、土地調査の場にも立ち会い、日本全国を奔走中。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]