DON'T LOOK BACK IN: なみちえのドライブ進化考 【VOL.03_BYD ATTO 3】

まさにいま、モビリティは進化中。アーティストのなみちえが、クルマと暮らしの新しい関係を、ドライブしながら考える。連載の3回目は中国からやってきたBYDの電気で走るSUV。
なみちえのドライブ進化考 【VOL.03BYD ATTO 3】
PHOTOGRAPH: MASATO KAWAMURA

いくぶん挑戦的なEVとなめらかさ

小春日和の湘南で、なみちえは海沿いをドライヴしている。クルマはBYD ATTO 3。2023年に日本上陸を果たした中国の電気自動車(EV)メーカーのSUVだ。

すこぶるコンパクトではないけれど、アクセルペダルを踏み込めば軽々と走り出し(いわく、いいヌルッと感)、心地よく加速。床下のバッテリーが重心を低くして、ステアリングを切ってもバタつかない。つまりすごくEVらしい走りをする。しかも電費効率も上々で、これは電池の開発製造を祖業とするメーカーならではだろう。

パノラマルーフウインドーの開放感はかなり。もちろん内装にシェード付き。

PHOTOGRAPH BY MASATO KAWAMURA

「外観は飾り気のないデザインなのに、インテリアはけっこうアグレッシブですよね。トレーニングルームみたいだし、ディスプレイが回転したり、ドアハンドルとスピーカーが一体だったり。だけど運転し始めたら、ふつうに快適でリラックスできる」

なんだか不思議なバランス。EVの造反有理! というほどでもないが、長足の成長を遂げる新進のモビリティメーカーの、挑戦的姿勢の発露ではあるまいか。中国製=低品質なんていう時代を塗り替えていったのも、こんな前進する意思の賜物かも。

スピーカーと一体になったドアハンドル。なんとも斬新な組み合わせ。

PHOTOGRAPH BY MASATO KAWAMURA

センターコンソールには12.8インチの大きなディスプレイ。回転式でタテ/ヨコをボタンひとつで操作可能。ナナメの状態では止められません。

PHOTOGRAPH BY MASATO KAWAMURA

そしてわずかにモーター音が響く車内ではクールなアフロ・ビートとソウルフルな歌声が聞こえる。Pine Robbieの「Cleva」。次いでなみちえの妹Manaの「Sento」は、かなりチルなトラックで、このまま箱根の温泉に行ってしまいたい気分。

「確かに。このクルマなら箱根の峠でも快適でしょうね。プレイリストのふたりは、アフリカ・ガーナにルーツのあるアーティストで、わたしもそう。アフロのリズムって湘南のチルな空気と合うと個人的には思ってて。来週からわたしもガーナに行くし」

期間はたぶん数カ月。ひとりのアーティストとして、ちょっとしたターニングポイントになりそうなルーツをたどる旅へ。快晴の湘南といくぶん挑戦的なEVのなめらかなドライブは、彼女のエネルギーをどうやら満たしていく。海風を深呼吸したりして。

PHOTOGRAPH BY MASATO KAWAMURA

CAR

BYD ATTO 3

2023年に日本で発売を開始したBYDのCセグメントのSUVタイプのBEV。電費効率よくキビキビと走り、EVらしいなめらかな走りを楽しむことができる。一方で「フィットネスジム」をコンセプトにしたインテリアは、随所にユニークな意匠性があり(回転式のディスプレイやスピーカー一体型のドアハンドル!)、大型のガラスルーフやシートの座り心地は上質さも感じさせる。シンプルなボディに宿る独特のバランスは、EVのイノベーターの野心の表れかもしれない。サイズ 4,455×1,875×1,615mm/重量 1,750kg/定員 5名/パワーシステム BEV(150kWh・FWD)/一充電走行距離 470km/¥4,500,000〈BYD/BYD Auto Japan

PLAY LIST

DRIVER

NAMICHIE|なみちえ

1997年、神奈川県茅ヶ崎市生まれ。東京藝術大学先端芸術表現科を首席卒業し在学時から現在まで受賞多数。音楽活動や着ぐるみ制作・執筆などマルチな表現活動を行なうアーティスト。19歳で運転免許を取得して以来、クルマとドライブが興味の対象になった。あるいはタクシードライバーだった祖母の影響かもしれない。23年末よりアフリカへの遊学を予定している。

PHOTOGRAPH BY MASATO KAWAMURA

Edited by Satoshi Taguchi

雑誌『WIRED』日本版 VOL.51 特集「THE WORLD IN 2024」より転載。
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