ガーミン「Forerunner 165」は、豊富なデータとランニングプランが健康に役立つフィットネストラッカー:製品レビュー

ガーミンから発売された「Forerunner 165」と「Forerunner 165 Music」は血液酸素トラッキング機能や気圧高度計などを備え、ランニングや睡眠に関するデータも確認できる優れたフィットネストラッカーだ。
ガーミン「Forerunner 165」レビュー:豊富なデータとランニングプランが健康に役立つフィットネストラッカー
PHOTOGRAPH: REI

最先端のフィットネストラッカーでさえ、すべてを計測することはできない。ガーミンの「Forerunner 165 Music」を試している間にひどい食中毒になり、2日間ほどベッドの上で過ごしたときのことだ。水を吐かないよう必死で耐えているとき、十分に眠れたので「Body Batteryが100%」になったとフィットネストラッカーに明るく通知されることほど、イライラすることはないだろう。「まだトイレから出られないの?」と、子どもに大声で聞かれるときと同じくらい腹が立つ。

ようやく運動を再開できたとき、このフィットネストラッカーは長くゆっくりとしたランニングで基礎体力を鍛えるようアドバイスしてくれた。ところが、すすめられたペースは信じられないほど遅かった。

大学のキャンパスのすぐ隣に住んでいるので、近所には若々しく、希望に溢れ、健やかに走る脚の長い10代の若者たちがたくさんいる。おかげでなおさら恥ずかしく感じたが、諦めなかった。おかげで脚の調子がいい。

そのうち、フィットネストラッカーはレベルを上げて20〜30分走り続けることを許可してくれて、心拍数もこれまでよりも低くなった。素晴らしい!

今回試したForerunner 165 Music(日本では44,800円)は、「Forerunner」シリーズの最新作である「Forerunner 165」のバリエーションのひとつだ。「Forerunner」シリーズに“はずれ”はない。初心者ランナーにとっては、基本的な機能を備えている「ForeAthlete 55」でも十分だろう。とはいえ、Forerunner 165には多数の追加機能が搭載されており、それらはForeAthlete 55との差額を正当化するものだと考えていい。

多数の便利な機能を搭載

Forerunner 165の見た目は、標準的な機能を備えた通常のガーミンのフィットネストラッカーと変わらない。5つのボタンはおなじみの配置(左側に3つ、右側に2つ)になっており、強化されたディスプレイ、FRP製のベゼル、シリコンストラップを備えている。

注意点としては、手首の皮膚が荒れないよう2〜3日おきにストラップを洗う必要があることだ。また、この製品は明るい直射日光の下でも問題なく画面の文字を読み取れるAMOLED(アクティブマトリクス式有機EL)ディスプレイを搭載している。

PHOTOGRAPH: ADRIENNE SO

ディスプレイはタッチ式になっているので、ボタンの操作を盛大に間違えることが大幅に減った。間違ったボタンを長押しして、緊急連絡先に電話をかけてしまう回数も劇的に減った(左側の「UP」に対応するボタンだ。助けが必要なとき以外は押さないようにしたい)。

Forerunnerのハイエンドモデルは、複数のスポーツをするアスリートを対象としているが、Forerunner 165は明確に一般ランナー向けに設計されたものだ。パーソナライズされたトレーニングプランに加えて、ランニングパワーやケイデンスといった指標を手首の画面から確認できる。

これに加えて、例えば「トレーニング効果」といった、ガーミン独自のより専門的な指標も確認できる。トレーニング効果は、個別のワークアウトが体の全体的なパフォーマンスに与えている影響を知るうえで役立つ。

ForeAthlete 55ではなくForerunner 165を選ぶ理由は、ディスプレイがよくなったことだけではなく、より多くのセンサーを備えている点にある。ユーザーの位置を特定することで正確なワークアウトの指標を計測可能だ。標準装備となったマルチバンドのGPS位置情報システム(GPS、GLONASS、GALILEO)に加えて、血液酸素トラッキング機能、気圧高度計、コンパス、環境光センサーも備わっている。

PHOTOGRAPH: ADRIENNE SO

実際、これらの機能が役立っていると感じている。血中酸素を計る機能の有用性についてはこれまで少し懐疑的だった。しかし、この機能のおかげで睡眠時無呼吸症候群であることが判明した友人が数人いるので、あると安心感がある。

また、気圧高度計は走った距離をより正確に計測する際に役立つ。上り坂は平地よりも距離があり、ハードな運動になるのだ。

また、環境光センサーはディスプレイの明るさを自動的に調整し、バッテリー消費の節約に役立っている。低価格なフィットネストラッカーに比べると、こうした機能が全体的な体験を少し改善してくれていると感じられる。

充実したデータ

健康増進とランニングのためにガーミンのデバイスを欲しいなら、Forerunner 165には求めているものがすべて詰まっている。自分のような健康オタクは、このフィットネストラッカーが収集したデータを眺めたり、指標が日々改善される様子を見て楽しめるはずだ。

地球に生まれて40年のうち30年もランナーをしているので、これまで多数のランニングプランを試してきた。ガーミンのプランはシンプルかつ柔軟で、簡単だ。毎日、推奨されるランニングプランや心拍レベルに従って走ることも、それらを気にせず自由に走ることもできる。どちらにしても、目に見えて健康になってくる。

食中毒で苦しんでいるとき以外は、ガーミンのモーニングレポート機能が参考になる。この機能では、その日の天気、睡眠に関する指標、そして日々のBody Batteryの数値を素早くスクロールして確認できる。

スマートリングによる睡眠の測定結果と比較したところ、ずれはほんの少ししかなかった。通常、ガーミンの計測した睡眠時間のほうが10〜20分ほど少なかったが、これは個人的には大きな問題ではない。朝起きる前に昨夜見た夢を思い出そうとして、少しだけベッドの上で転がって過ごすことが多いからだ。

PHOTOGRAPH: ADRIENNE SO

バッテリーの持続時間は11日間とされているが、1日に複数の活動を追跡した場合は1週間ほどで残量がなくなった。でも、これはあまり気にはならない。ガーミンの専用充電器を使ってデスクで充電すれば、1時間程度で100%まで残量が回復するからだ。また、搭載されているマルチバンドの衛星に対応した位置情報システムは、次の予定に間に合わないと気づいて走ったときのジグザグとした奇妙な帰宅経路さえ正確に捉えていた。

データをより見やすく整理することを目的に、ガーミンの専用アプリ「Garmin Connect Mobile」は今年初めにデザインが刷新されている。実際に自分が使っている設定では、上部にその日の活動、中央に睡眠とBody Batteryの指標、下部に心拍数、週間運動量、ストレスレベルを表示している。

これらの指標はどれも任意のものだ。つまり、好みに合わせて配置を変えたり、下部の表示項目をチャレンジやカレンダー、Garmin コーチなどに切り替えたりできる。デザインの変更に対して特に意見はないが、旧バージョンより劇的に操作しやすくなった印象はない。

音楽再生機能の使い勝手には難点

大きな不満がひとつある。それはガーミンの製品で音楽を聴くことが年々難しくなっているように感じることだ。スマートフォンをもたずにワークアウト中に音楽を聴ける機能は、人々がフィットネストラッカーを購入したいと思う理由のひとつである。

実際のところ毎日、夫のことを羨望のまなざしで見ている。夫はAirPodsを装着し、Apple Watch Ultraと簡単に接続して、モバイル通信でストリーミングサービスの音楽を聴きながら外出するのだ。

ガーミンで音楽を聴くことは数年前までは簡単で、操作は直感的だった。それに比べると、いまの製品の使い勝手は悪くなっている。各社のフィットネストラッカーがそれぞれのエコシステムにより密接に結びつくようになったことが原因だ。

Forerunner 165には通常版と音楽再生に対応したForerunner 165 Musicがあり、こちらのほうが50ドル高い。今回はForerunner 165 Musicを試した。ところが、Spotify経由で音楽を再生するために、信じられないほど多くのトラブルシューティングの説明を読まなければならなかった。ユーザーからの質問の量を見ても使いづらさがわかる。

実際に使ってみたところ、プレイリストをフィットネストラッカーにアップロードできなかったので、約10項目の内容を確認するはめになった。Spotifyの有料プラン「Spotify Premium」に加入しているか? テストアクティビティは転送されたか? 再起動すべきか? 端末を接続してデバイスの管理に使うアプリ「Garmin Express」を使用すべきか? 最終的には諦めて、ガーミンの担当者に助けを求めた。

同じような問題を抱えているなら、ひとつの解決策はGarmin Connect Mobile アプリで接続しているネットワークを一度消してから、もう一度追加することだ。フィットネストラッカーのあらゆる部分がWi-Fiに接続されていることを示していたので、この手順がガーミンのトラブルシューティングの説明に記載されていなかったことを非常に不満に思っている。

最終的には自分のプレイリストをダウンロードして聴くことができたが、それに至るまでの手順は非常に時代遅れに感じられた。アップルが音楽再生に対応したApple Watchを通常版に50ドルも上乗せして販売し、その機能を使えるよう問題を解消するまで30分もかかるとしたらどう思うだろうか。

それでもForerunner 165は、ガーミンのForerunnerシリーズにおける堅実な製品である。最小限の機能だけを備えたForeAthlete 55と比較しても大幅に進化している。高度計や血中酸素センサーを含むいくつか重要な機能が加わり、値段に見合うだけの価値がある。

ただし、胃の症状に気づいてもらったり、音楽を聴く際の機能にはあまり期待しないほうがいい。それ以外は何の問題もないだろう。

◎「WIRED」な点
正確なデータを豊富に手に入れられる。日々のモーニングレポートが楽しい。軽量で耐久性がある。バッテリーの持続時間は十分。マルチバンドのGPSシステム、血液酸素トラッキング機能、高度計を備えている。

△「TIRED」な点
プレイリストを一度にひとつしかダウンロードできない点は時代遅れに感じる。

(Originally published on wired.com, translated by Nozomi Okuma)

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