“TikTok禁止法”が大統領署名で成立、TikTok側は「禁止令」と強く反発

TikTokの米国での運営禁止につながる法案にジョー・バイデン大統領が署名し、“禁止法”として成立した。親会社である中国のバイトダンスが事業を売却しなければ、2025年にも米国での運営が禁止されることになる。
US President Joe Biden speaks during a campaign event
Photograph: Hannah Beier/Getty Images

米国のジョー・バイデン大統領は4月24日(米国時間)、早ければ2025年にも米国でのTikTokの運営を禁止する法案に署名した。

この法案ではTikTokの親会社である中国のバイトダンス(字節跳動)に米国での運営から手を引くよう求めており、それができなければ運営を全面禁止とする。米国の上院と下院は、この法案を過去数年にわたる努力の末に成立させることに成功した。

法案はウクライナやイスラエル、台湾を支援する大規模な対外支援パッケージの一部だったことから、反対票を投じることが困難な議員もいた。なかでもウクライナに対する支援はバイデンにとって、ロシアが22年にウクライナに侵攻して以来の重要課題の一部であり、彼は先週の段階でこの支援法案への支持を表明していた。

「違憲である禁止令に異議」

注目すべきは、上院での法案可決に際してバイデンが発表した4月23日夜(米国時間)の声明において、バイデンは「TikTok禁止」にはまったく触れず、法案に含まれる950億ドルの対外支援に焦点を当てていたことだろう。

「米国議会が法案を可決したのは、わが国の安全保障を強化し、米国のリーダーシップの力について世界に次のようなメッセージを送るためである。われわれは民主主義と自由のために断固として立ち上がり、専制政治と抑圧に立ち向かう──」

「この違憲である法律はTikTokを禁止するものであり、わたしたちは法廷で争っていく。事実と法律は明らかにわたしたちの味方であり、最終的には勝利を得ると信じている。実際にわたしたちは、米国でのデータを安全に保ち、外部からの影響や工作からわたしたちのプラットフォームを守るために、数十億ドルを投資してきた」と、TikTokの広報担当者は23日に声明を出している。「この禁止令は700万社のビジネスに壊滅的な打撃を与え、1億7,000万人の米国人を沈黙させることになるだろう。わたしたちはこの違憲である禁止令に異議を唱え続けながら、TikTokがあらゆる立場の米国人が安全に経験を共有し、喜びを見つけ、インスピレーションを得られる空間であり続けるように、投資と革新を続けていく」

TikTokの最高経営責任者(CEO)の周受資(ショウ・チュウ)は24日(米国時間)にTikTokに投稿し、この法案について「禁止令」であると明言している。

「米国でTikTokを禁止する目的でつくられた法案を米国議会は可決し、大統領は署名しました」と、周は語っている。「これは間違いなく“禁止令”です。TikTokを禁止するものであり、みなさんやみなさんの声を禁止するものなのです」

これに対して中国政府は以前、TikTokの事業売却については認めない方針を示していた。また、バイトダンスが保有するアルゴリズムについては輸出規制をかけている。

(Originally published on wired.com, translated by Daisuke Takimoto)

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