Nothingの「Ear」と「Ear (a)」は、優れた音質を手ごろな価格で楽しめる満足度の高いイヤフォン:製品レビュー

Nothingから新型イヤフォンの「Nothing Ear」と「Nothing Ear (a)」が登場した。どちらも音質がよく、デザイン性も高い。価格が手ごろな割には素晴らしいワイヤレスイヤフォンに仕上がっている。
Nothing「Ear」、「Ear a)」レビュー:優れた音質を手ごろな価格で楽しめる満足度の高いイヤフォン
PHOTOGRAPH: PARKER HALL

すべてをいちから発明する必要はない。製品を毎年少しずつ改善する方法で、いま市場で入手できる最高のワイヤレスヘッドフォンができるのだ。それこそNothingが、最新のイヤフォン「Nothing Ear」と「Nothing Ear (a)」でたどっている道だ。Nothingは創業時にヘッドフォンやスマートフォン以上のものを提供すると誓っていた。その約束はまだ完全には果たされていないものの、同社は少なくとも見た目に反して手ごろな価格のイヤフォンを提供してくれている。

新しいNothing EarとNothing Ear (a)は、同社にとってアップルの「AirPods」に似たイヤフォンの第三世代のモデルであり、競争力のある音質、価格、ユーザー体験を備えた成熟した製品となっている。ポケットに容易に収まる見た目のよいケースを備え、本体の設計もよく練られていることを考えると、150ドル以内で買えるワイヤレスイヤフォンとしては素晴らしい製品である。

どちらも画期的なオーディオ製品ではなく、もう少し予算があれば、もっとよいイヤフォンを手に入れられるし、似た競合製品も多数ある。とはいえ、この製品はほとんどの人が十分に満足できる完成度だ。優れた機能を搭載し、見た目も素晴らしい。これ以上、何を求めるというのか。

ふたつのモデルの違い

価格はNothing Earが150ドル(日本では22,800円)で、Nothing Ear (a)が100ドル(日本では14,800円)だ。製品名に付いている「a」は、Nothingのスマートフォン「Nothing Phone (2)」とより低価格な「Nothing Phone (2a)」と同じ命名規則に従っている。とはいえ、同社は2021年に「Nothing Ear (1)」を発売し、昨年発売のモデルは「Nothing Ear (2)」だったので、最新モデルが「Nothing Ear (3)」でない点はわかりづらい。

Nothing EarとNothing Ear (a)の外観における最大の違いはイヤフォンのサイズだ。また、より高価なNothing Earの持ち運びケースはワイヤレス充電に対応している。製品の外観は、23年発売のNothing Ear (2)とほぼ同じだが、わずかに大きくなり、重くなっている。Nothing Ear (a)のほうが小さく、Nothing Earにある高度な機能がいくつか省かれているが、ケースとイヤフォンに遊び心のある明るい黄色のアクセントカラー(好みに合わせて白と黒も選べる)が使われている。

Nothing Ear (a)

PHOTOGRAPH: PARKER HALL

どちらのワイヤレスイヤフォンにもイヤーチップが3サイズ付属しており、標準の中サイズが最初から本体に装着されている。わたしの非常に平均的な耳のサイズにはちょうどよかった。ただし、Nothing Earの方は少しきつく感じられ、耳が小さい人にはしっくりこないかもしれない。Nothing Ear (a)はサイズ、安定性、長い間着用したときの快適さという点で、非常にバランスがよい。少し大きくて機能を多く備えたNothing Earも嫌いではないが、快適さだけで選ぶならわたしはNothing Ear (a)の方を買う。

Nothing Ear (a)に使われているチップセットはNothing Earのものよりも性能がやや低い。とはいえ、Nothing Ear (a)はNothing Earと同程度のノイズキャンセリング機能をもち、ドライバーも同じで、良質な通話品質を実現するマイクも同じ数だけ備えている。性能の低いチップセットを搭載していることには利点もある。バッテリーの持続時間が長いのだ。アクティブノイズキャンセリング機能をオンにした場合、高価なNothing Earのバッテリー持続時間は5.2時間なのに対し、Nothing Ear (a)は最大5.5時間である。

ほかの違いはというと、Nothing Earはイヤフォンでは珍しいセラミック素材をドライバーに使用しているのに対し、Ear (a)はより一般的なポリマー系の素材を使用している。これがどのような違いをもたらすかは後述する。

Nothing Ear

PHOTOGRAPH: PARKER HALL

ふたつを実際に試したところ、どちらも同じように機能した。Nothingのこの製品は、これまで試してきたイヤフォンのなかで最高のタッチコントロールを備えている。イヤフォンの軸の部分を軽くつまむ(または数回つまむ)ことで音楽の再生または一時停止をしたり、トランスペアレンシーモードのオンオフを切り替えたりできる。これは移動中、周囲に流れているアナウンスを聴きたいときに便利だ。

設定はAirPods並みに簡単だ。ケースを開けるとすぐに、ペアリング技術「Fast Pair」で手持ちのサムスンのスマートフォン「Galaxy S23 Ultra」とのペアリングを要求した。イヤフォンと端末を連携させると、Nothingの独自アプリが自動でダウンロードされる。イヤフォンと連携するこのアプリは、イコライザーの設定といったより高度な機能を利用するためのものだ。こうした作業が完了するまでに30秒もかからなかった。

より静かに進化

どちらのイヤフォンでも、音が45デシベル静かになった点は印象的だ。おかげで、ジムや歩道など騒がしい場所でも、手元の作業(あるいは聴いているポッドキャストや音楽)に完全に集中することができる。AirPods ProやソニーのWF-1000XM5、またはJabraの高級モデルElite 10のノイズリダクション機能ほどではないが、これらの製品はNothingの製品より100ドル、場合によってはそれ以上高額だ。Nothingは手ごろな価格で、最高品質のノイズリダクション機能と肩を並べる性能を提供しているのだ。移動中にNothing EarとNothing Ear (a)を使用すれば、飛行機のエンジン音や空調の一定した騒音を抑えてくれることに気づき、満足するだろう。

音質も優れている。独自の11mmドライバーの音は明瞭かつダイナミックだ。イヤフォン内部のドライバー素材の違いや物理的な違いはあるものの、ふたつのモデルでは音のチューニングに共通点が感じられる。これら第三世代のNothingのイヤフォンは非常に開放的な中音域を再現している。特に前モデルと比較すると、アコースティックギターやピアノなどの音が重なり合っている曲でもそれぞれの音を聴き取りやすい。

音はニュートラルだ。つまり、より明るい高音やパンチのある低音を際立たせるために、中周波数の領域が抑えられているわけではない。その音は標準のAirPodsよりもはるかに冷静でしっかりとしていることから、両者を単純に比較することは難しい。とはいえ、改良されたドライバーを搭載しても、まだより高価なAirPods Proほど洗練された聴き心地ではない。それでも音量を大きくすると高音が硬くなりがちなエレクトロ・ポップなど、あらゆるジャンルの音楽で優れた音質を提供してくれる。

左:Nothing Ear (a)  右:Nothing Ear

PHOTOGRAPH: PARKER HALL

際立つデザイン性

特にラリー・ヤングのクラシックジャズアルバム「UNITY」の聴き心地はよかった。この曲は明るいスネアドラム、きらめくシンバル、そしてヤングのオルガンの合間にホルンの音がたくさん重なっている点が特徴だ。Nothingのイヤフォンで聴いた曲「Zoltan」は特に素晴らしかった。曲のブリッジ部分でのホーンの音が、蜃気楼のように脳を横切って拡がる感じがした。

Nothing Earに使われているセラミック加工は、少なくともわたしの耳には音を大きく改善しているようには感じられなかったものの、オルガンの低音にはわずかに奥行きが増していた。従って、高額なモデルのほうが好ましいが、「絶対に差額を払って高いモデルを買うべき」と言えるほどではない。むしろ、Nothing Ear (a)の価格と機能を考えると、ふたつのイヤフォンではこちらのほうが気に入っている。

総じて、Nothing EarとNothing Ear (a)はどちらも素晴らしい音質のイヤフォンであり、数ある製品のなかからこれを選ぶという判断に間違いはない。Beats、Jabra、サムスン、ソニーなどが提供している150ドルの価格帯のお気に入りのイヤフォンはいくつかある。しかし、ここでNothingのデザイン言語が存在感を放つ。100ドルの価格帯で、Nothing Ear (a)の見た目、音質、機能性に対抗できるイヤフォンは非常に少ない。スマートフォンでニッチな市場を切り拓いたように、Nothingはここでもプロ向けの機能をより手ごろな価格で提供することに成功している。

高品質なデザインと実証済みの技術をカスタマイズして搭載した手ごろな価格の製品の開発に注力し続けるなら、Nothingは今後さらに成長し、大きくなれるかもしれない。新しいNothing Ear (a)はこれを見事に象徴している。

◎「WIRED」な点

手ごろな価格。音と通話の品質がよい。制御しやすい。デザインもよい。Android搭載スマートフォンと素早くペアリングできる。イコライザー調整機能付きの使いやすいアプリ。どちらもバッテリーのもちがよい(アクティブノイズキャンセリング機能をオフにすると特に顕著)。

△「TIRED」な点

耳が小さい人にとっては少し大きいかもしれない。「Nothing Ear」と「Nothing Ear (a)」は似ており、高価なモデルを買う価値はあまりないかもしれない。

(Originally published on wired.com, translated by Nozomi Okuma)

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カール・ペイはNothingの創業時に、革新的な消費者向け製品を提供するテックブランドになることを約束していた。しかし、中価格帯の質のよいイヤフォンを提供し続けるだけでは、そのような地位を確立するのは難しいだろう。

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