ヘアドライヤーのような成熟したカテゴリーには、もはやイノベーションなど起こらないのではないか──。そんな“常識”を覆すような製品をダイソンが発売した。
日本で4月18日に先行発売されたヘアドライヤーの新製品「Dyson Supersonic r」は、その名の通りアルファベットの「r」のようなユニークな形状が目を引くヘアドライヤーだ。まるで先の曲がったパイプのようにも見える本体の重量は325gで、手に取ると明らかに他のヘアドライヤーよりも小さくて軽い。それでいて、髪を素早く乾かせるだけの十分に強い風量がある。
そして、この先端が「r」のように曲がった形状のおかげで、後頭部などの手が届きにくかった部位も楽に乾かせるようになった。つまり、高性能かつ使いやすいヘアドライヤーに求められる機構や機能すべてを、このミニマルなデザインに詰め込んでいる。
デザインありきで小型化を実現
実はこの独特の形状、ヘアドライヤーに必要な機能や機構の積み重ねで決まったわけではない。「人間工学に基づいて、この“r”の形状を前提に開発を進めたのです」と、ダイソンのエンジニアのギャビン・ギャリガンは語る。つまり、最初から「r」の形状になることが決まっていた。あとは、いかにヘアドライヤーに必要な部品や機構をr型の小さなボディに詰め込み、「さすがはダイソン」と言わせるだけの性能を実現するか、である。
モーターは持ち手の中央付近に配置すれば、重量バランスがよくなって軽く感じる。これは「T」字の形状だった従来モデル「Dyson Supersonic Shine」などで実証済みだ。この小さくて強力な自社開発のモーターを駆動させ、持ち手の下部に設けた吸気口から空気を吸い込む。
最大の難関だったのは「空気を加熱するヒーターの機構だった」と、エンジニアのギャリガンは言う。残されたスペースが少ないなか、コンパクトでありながら十分な加熱性能を発揮し、即座に冷風との切り替えも可能なヒーターを搭載する──。そんな目標を掲げて行き着いたのが、「r」の曲がった部分にヒーターを配置する独自の構造だった。
Supersonic rのヒーター部は3つに分割されて配置され、そこには網のようになっていて空気を通す計9枚のヒーターフォイルが吊り下げられている。このダイソンが「流線形ヒーター」と呼ぶ独自の機構によって、曲がった部分を通る空気を均一に素早く加熱できるようになったという。小さくて軽いデザインありきでスタートしたプロジェクトは、こうしてアイデアと技術によって製品化にこぎ着けた。こうした開発プロセスは、かつてソニーが生み出した初代「ウォークマン」を思わせる。
アタッチメントを自動認識
Supersonic rのもうひとつの特徴は、付属する3種類のアタッチメントだ。高速の風で髪を素早く乾かせる「速乾ツール」と、均一に拡散されて温度が下がった風を出す「低温ツール」、そして風のうねりを抑える「なめらかツール」の3種類が用意され、いずれもSupersonic r本体とマグネットで着脱できる。
このアタッチメントにはICタグの一種であるRFIDタグが内蔵されており、どのツールを装着したのかをSupersonic r本体側で自動認識する。それぞれのツールに合わせて風速と温度が最適化されるほか、カスタマイズした設定はそのまま記憶される。ユーザーが使い込むほどに、使いやすくなっていく工夫といえる。
Supersonic rは実はプロ向けのモデルが2月に先に発表されており、今回の一般向けモデルはプロ向けで実績を重ねたうえでの満を持しての投入となる。付属するアタッチメントや風量・温度の設定などが異なるほかは、基本的に一般向けモデルにも同じ技術を採用しているという。
Supersonic rは世界に先駆けて日本で先行発売となり、直販サイトでの価格は59,000円。本体のカラーは「セラミックピンク」のほか、「セラミックパティーナ/トパーズ」と「ビンカブルー/トパーズ」の3色展開となる。
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